'06 新人発表事前抄録

咬合再構成に苦慮した症例
A case of denture that consideration of full mouth reconstruction
三橋 健一郎(救歯会:卒後9年)

【要旨】
   卒後6年目の開業当初から手がけた症例で、咬合再構成にチャレンジした症例です。上下顎ともコーヌスクローネをもちいて咬頭嵌合位を安定させようと試みたのですが、術者の見落としや技量不足により再製を余儀なくされました。一連の過程をご覧いただきご指導、ご批判をいただきたいと思います。
症例
患 者:77才 女性
初診日:H15/11/22
主 訴:入れ歯を作り直したい
歯 式::初診歯式

:術後歯式

症例の特徴:残存歯数11本。Eichner B3。咬合支持数2。咬合三角 第3エリアL。
もともと、上顎は磁性アタッチメントの義歯が入っており、根面う蝕が顕著であった。下顎は固定性ブリッジが装着されていた。上顎が小さく、下顎が大きい上下顎堤の差が大きかった。

【処置内容とその根拠】
  1. 保存不可能な歯の抜歯
  2. 歯周初期治療後、上顎の残根はクラウンレングスニングを施行
  3. 二次固定効果とメンテナンスのしやすさ、咬頭嵌合位をつくるためよりリジットな義歯としコーヌスタイプの設計をたてた。
  4. 完成から2週間ほど経過しても義歯が動揺し、咬合調整が多くなった。
  5. 義歯の回転沈下が収まらず、外冠から再製を余儀なくされた。
  6. 顎位、排列、歯冠形態、ろう着操作などを見直しながら再製した。
キーワード:【1.上下顎堤の大きさの差】【2.義歯の回転沈下】【3.ろう着】


智歯の近心移動を試みた症例
a case report of approaching to a defect of a second molar with minor tooth movement
井上 真由美(火曜会:卒後6年目)

【要旨】
患者  :30才 女性
初診  : 2002.3
主訴  :左下の歯が一部折れた
職業  :添乗員(1wおきに海外勤務)
特記事項:2003.4出産
歯式::7抜歯
初診時、7は冠脱離から1年放置されていたため残根状態になってお り抜歯に至りました。患者には模型及びX線診査から欠損部の処置方針について
・MTM ・全顎矯正 ・自家歯牙移植 ・経過観察 の4案を提示しました。
その後、患者の来院が途絶えてしまい再来院時には抜歯後2ヶ月が経 過していました。再度、治療方針を考え患者と話し合いの結果、MTMを始める ことになりました。

【治療】
MTMを行うにあたり
・可及的に6に近づけること。
・歯軸を整 えて適切な咬合接触を与えること。
・アンカーロスをおこさないよう注意すること。
以上3 点を目標にしました。
まずは固定源をしっかりと設定し8をできる限り近心移動させました。傾斜移動となりましたが6とコンタクトさせた後、歯軸の改善を行いました。動的 治療中に出産による中断はありましたが1年半をかけMTMを終了しました。

【反省・結論】
  1. 抜歯後2ヶ月中断したため当初、考えていた治療の選択肢が狭まる結 果となりました。
  2. アンカーロスは極めて少ないと考えています。
  3. 歯軸の改善の際、68間のコンタクトが空いてしまったことは手技的な問題があったと反省しています。
  4. MTMの期間は長くかかりましたが、欠損部に対し智歯を生活歯で切削 せずに移動できたことは有効であった考えています。
  5. 8の歯軸の改善、及び挺出していた対合歯の補綴により適切な咬合関 係が作れたと考えています。
キーワード:【傾斜、歯体移動】【歯軸】【咬合関係】【アンカーロス】 


矯正治療を行った歯周病治療の1症例
A case report of periodotitis with orthodontic therapy
村松瑞人(新潟月穂の会:卒後14年)

【要旨】
患者:49才女性、会社員
初診:1999年11月来院
主訴:右上第2大臼歯の咬合痛と下顎前歯の動揺による咀嚼障害
歯式:
全顎的に中程度から重度の歯周炎で上顎前歯は大きくフレアアウト、全顎的な歯牙の動揺、審美障害、咬合の不安定が認められた。
歯周初期治療により症状の改善が認められたため、矯正治療による咬合と審美障害の回復、歯周外科処置による歯周組織の改善を目指した。
現在、治療開始から約6年半、矯正終了後約3年経過した。その間前歯部はスーパーボンド?にて固定してあるが、固定が外れることもない。また矯正治療後、歯列に大きな変化はない。また歯周組織の状態も比較的安定した経過をたどっている。

【結論】
・歯周病治療に矯正治療を併用することで、プラークコントロールが容易になり、
 審美的コンプレックスを排除することができた。
・矯正治療は、歯周病治療への意欲を高め、治療効果をあげることにつながった。
・補綴物による固定をせずにレジンによる固定は3年を超えたが、歯列の大きな変化はない。
キーワード:【歯周治療】【矯正治療】【レジンによる固定】 


初めての多数歯治療-根尖病変の悪化に遭遇して-
竹田 岳史(包歯研:卒後5年目)

【要旨】
 卒後4年がたちました。まずは基本的な処置をひとつひとつ確実に行うことを目標に治療に望んでいきましたが、臨床の中では成書のようには行かない事が多々起こります。また、患者さんによって個々の既往や原因、色々な習癖も異なり個別対応に日々悩んでいます。

 本症例は卒後2年目から取り組みました。全顎的に重度な歯周疾患の罹患があり、さらに失活歯の全てに根尖病変を呈しています。歯冠側、根尖側、両方向からの付着の喪失を認めました。抜歯の選択もあったと思いますが、歯牙の保存を目指し保存補綴治療を行いました。

 診査・診断・治療計画・処置方針の立案や手技の不足など問題点も多く、治療期間も長期にわたってしまいましたが、一連の治療の経過を発表させていただき、諸先生方のご指導を承りたいと思います。

 症例
  患 者:40才 男性
  初 診:2003.12
  主 訴:歯石を取ってほしい
  職 業:会社員
  歯 式:

【反省・結論】
・一部抜根を必要としながらも残存歯の保存ができたが、完全なる歯周組織の安定は得られませんでした。
・治療期間中の咬合の管理の重要性を認識しました。
・間接法の手技の難しさを実感しました。
・歯周組織の安定には力のコントロールも関係あるのではと感じました。
・ペリオのメンテナンスと補綴とナイトガードによる力の分配に注意しながら経過観察を行っていきたいと考えています。

キーワード:【根管治療】【咬合様式】【個別対応】 


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